プラズマの自己組織化
3次元Hall-MHDシミュレーション
Hall-MHD(電磁流体力学; magnetohydrodynamics)は,イオンが,ある小さい空間スケール(慣性長; inertial skin depth)においては,電子の運動に追随できなくなることによる効果を取り入れて MHDモデル(MHDモデルでは電子とイオンは同じ運動をする)を拡張した,プラズマの2流体モデルである.Hall-MHDでは,小スケールの構造が,グローバルスケールとカップルし,プラズマが多様な平衡状態を作ることを可能にする.下の図は3次元Hall-MHDの直接シミュレーションにより得られたもので,興味深い定常状態にいたる動的な緩和過程を明らかにするものである.

図は磁束の時間変化を示している.黄色と青の筒状の構造は,絶対値が等しく符号の異なる磁束の等高面(実質的にプラズマの形状)を示している.つまり,黄色の筒上の磁力線は,青の筒上の磁力線と向きが逆になっている.初期の状態(9つの互いに向きが異なる磁場をもつ筒)は理想MHDの不安定性(キンク不安定性)に対して不安定な平衡である.キンク不安定により駆動された乱流状態を経て,プラズマは安定な状態へ緩和し,螺旋状にねじれた2つの筒状構造を自発的に形成する.この緩和状態は,MHDの緩和状態(テイラーの無力状態)と非常に似通っているが,顕著な違いは,Hall-MHDの緩和状態が流れを持っている点である.このことから,このシミュレーションが,Hall-MHDの緩和状態(二重ベルトラミ状態)を示しているといえる.